悲しいほどお天気

松任谷由実( Matsutoya Yumi ) 悲しいほどお天気歌詞
1.ジャコビニ彗星の日

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

夜のFMからニュースを流しながら
部屋の灯り消して窓辺に椅子を運ぶ
小さなオペラグラスじっとのぞいたけど
月をすべる雲と柿の木ゆれてただけ

72年 10月9日
あなたの電話が少いことに慣れてく
私はひとりぼんやり待った
遠くよこぎる流星群

それはただどうでもいいことだったのに
空に近い場所へでかけてゆきたかった
いつか手をひかれて川原で見た花火
夢はつかの間だと自分に言いきかせて

シベリアからも見えなかったよと
よく朝弟が新聞ひろげつぶやく
淋しくなればまた来るかしら
光る尾をひく流星群


2.影になって

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

なんて不思議な光を浮かべた霧の夜なの
どこへ続くの 街路樹の影たち

指が痛いほど 残らずダイヤルしたけど
呼びだしの音だけが耳の底にくりかえす
こんなときはすぐにワードローブちらかし
くたびれたシャツを選んで
外へ出てゆこう 少し背中まるめ
踊るように歩こう

最終の電車が響き残して流れた
いちばんなつかしい遠いイメージのように
冷えだした手のひらで包んでる紙コップは
ドーナツ屋のうすいコーヒー
真夜中は全てが媚びることもなく
それでいてやさしい

※むかし確かにどこかで出逢った一枚のネガ
淋しい心から きみを自由にする
かるく透き通らせて※

(※くり返し)

なんて不思議な なんて不思議な霧の夜なの
どこへ続くの 街路樹の影たち


3.緑の町に舞い降りて

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

輝く五月の草原を
さざ波はるかに渡ってゆく
飛行機の影と雲の影
山すそかけおりる
着陸ま近のイヤホーンが
お天気知らせるささやき
MORIOKAというその響きが
ロシア語みたいだった

三つ編みの髪をほどいてごらん
タラップの風が肩にあつまる
もしも もしもこの季節
たずね来ればきっとわかるはず
あなたが気になりだしてから
世界が息づいてる

銀河の童話を読みかけて
まどろみ 心ははばたく
あてもなく歩くこの町も
去る日は涙がでるわ

セロファンのような午後の太陽
綾とる川面をゆっくり越えて
いつか いつかこの季節
たずね来ればきっとわかるはず
誰かが気になりだしてから
世界が息づいてる
新しい笑顔お土産に誰かのもとへ帰る


4.DESTINY

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

ホコリだらけの車に指で書いた
True love, my true love
本当に愛していたんだと
あなたは気にもとめずに走りだした
True love, my true love
誰かが待ってたから

冷たくされて いつかは
みかえすつもりだった
それからどんな人にも
心をゆるせず

今日わかった また会う日が
生きがいの 悲しいDestiny

緑のクウペが停まる 雲を映し
Sure love, my true love
昔より遊んでるみたい
みがいた窓をおろして口笛ふく
Sure love, my true love
傷あとも知らないで

冷たくされて いつかは
みかえすつもりだった
それからどこへ行くにも
着かざってたのに

どうしてなの 今日にかぎって
安いサンダルをはいてた
(今日わかった)空しいこと
むすばれぬ 悲しいDestiny


5.丘の上の光

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

すみれ色のまま夕暮れを止めて
新しい自転車で高原をすべる
夏へ急ぐ空 おだやかに翳り
このまま二人ずっと漕いでゆきたいの

いつしか今日の日も想い出に
少しずつかわる

今 大事なのは前をゆくあなたが
綺麗なシルエットになっていること
向かい風そっと ほほつねってみて
愛し始めた気持 まぼろしかどうか

いつしか 今日の日も想い出に
少しずつかわる

すみれ色のまま夕暮れを止めて
流れる雲のように丘へ上ぼるまで
ひととき神様 息をかけないでね
素敵な光ほど移ろうのだから


6.悲しいほどお天気

作詞:Yumi Matsutoya
作曲:Yumi Matsutoya

上水ぞいの小径をときおり選んだ
夏の盛りの日もそこだけ涼しくって

名もない蔦や柳がひくくたれこめて
絵を書く私達 それぞれひとりにさせた
まるで先の人生を暗示するように

みんなまだ
気づかず すごしていたんだわ
ずっといっしょに歩いてゆけるって
だれもが思った ム・ム…

拝啓。今はどんな絵 仕上げていますか
個展の案内の葉書きがうれしかったの
臆病だった私は平凡に生きている

みんなまだ
信じてすごしていたんだわ
ずっといっしょに歩いてゆけるってだれもが…

いつまでも
私の心のギャラリーにある
あなたの描いた風景は
悲しいほどお天気 ム・ム…


7.気ままな朝帰り

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

北風のベンチでキスしながら
心では門限を気にしてた
なごりおしい顔をして半分ホッとして
電車のドアで手をふる私

そんな恋がいくつか過ぎたあと
運命のいたずらに出逢ったの
あれはたしかTeen Age 最後のクリスマス
あなたに胸がふるえた

家なんか出てしまおう
なんとかくらして
もう二度としばられない

けれどゆうべただひとり
あなたを忘れるため
にぎわう通り歩いた

父親がうらめしかった昔が
なんとなくてれくさくなつかしい
だって今は誰ひとりとがめることもない
気ままな朝帰りなの


8.水平線にグレナディン

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

白い灯台が浮かびあがる
海は暮れなずみ 帆影は急ぐ

舵をとりながらふりむいたら
私もたなびく景色でしょうか

Glowing seasons flew away
We promise to stay
帰らないと知っても

細いプラチナのブレスレットが
夏の紅を最後に宿し

Now I feel the cold breeze
You made me feel at ease
帰らないと知っても

錆びたスクリューにさわってみる
今日は初雪が沖を吹いてる

古い溜り水 船底から
ズックですくった 凍らぬように


9.78

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

ふるさと忘れない渡り鳥の群れは
どこかに磁石を持ってる
見えない法則を人は神秘と呼び
操れるものを怪しむ

太古の昔に失くした全ての力を
ここにとり戻す
生命をかけるほど何かを望むなら
カーテンをあけてお入り

流れ流れの果て手にしたタロットは
黒いアラベスクの模様
太古の昔に失くした全ての力を
ここにとり戻す
精霊を呼ぶ

78… 78… 絵札はさすらい
78… 78… 未来を示す

月の影法師をチョークで囲んだら
それは宇宙の魔法陣
風のシルフィや大地のグノメ
火のサラマンデル 水のオンディーヌ
精霊を呼ぶ

※78… 78… 絵札はさすらい
78… 78… 秩序は廻る
78… 78… 絵札はさすらい
78… 78… 未来を示す※

(※くり返し×2)


10.さまよいの果て波は寄せる

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

泣いてかけてゆけばそこに きらめく海原
けれど受け入れはしなかった私の弱さを
沖をすべってゆく船と 足もとで遊ぶ犬と
風を切る鳥たちだけ 自由だった

夢中になれる何かが 明日へいざない
いつしか遠く旅したと あなたに告げる

いつも悩みをたずさえて 潮騒をきいた
けれど答えは得られぬまま朝焼けは終る
銀の雲間から差し込む光いくすじも見とれ
冬の日の冷たさを忘れてた

消えてゆかないくやしさが 私を導き
気づけばここへ来ていたと笑っていえる

言葉にない愛の 透き通る手紙を
海はよせてくれる 波にのせて

ああ 失うものはもうなんにもなくて
心静かな私がはじめて見える

夢中になれる何かがどこまでも導き
いつしか遠く旅したとこの海に立ち告げよう